ディーシーテンDC10

イビサ島（スペイン）エアポートのランウェイの先にある小さなファームハウス。ダンスミュージックカルチャーのヒストリー本にも堂々と掲載されてきたここ「DC10」は、その快楽主義的で何でもアリな毎週月曜日のアフターパーティー「Circo Loco」のおかげで、クラブ愛好家たちの間で世界一知られている場所。

1990年のオープンから10年間、このクラブはそのインパクトを絶えず維持しつづけてきました。サリナスへと続く道を1キロ下った場所に建てられた目立つところのないこの建物は、その頭上を低空で飛ぶ飛行機のみによってかろうじて存在を知られ、風変わりなフラメンコの見世物やヒッピーのこじんまりとしたパーティー、サリナスのビーチで飲み騒ぐ人々によって使われていました。
そして1999年、「Circo Loco」の登場によってすべてが変わりました。

月曜の朝になるとアフターアワー・パーティーを開催し、より深遠で前衛的、かつ最先端のサウンドを追及することで、DC10は週末をもっと長く味わいたい、またはフレッシュな気分で週明けを迎えたい人々から一気に注目されるようになりました。

当時の入場は無料、いつも同じような顔ぶれのメンバーたちがクラブの中で踊り、リアルなコミュニティー感覚がそこにはありました。

クラブのメンバーたちは皆、その時代がまさに自分たちの時代であることを知っていました。
しかしすぐに、新たなメンバーがどんどん参加し、ミュージックが屋内のみで流れているにもかかわらず、太陽に照らされたテラスの上に踊る人々があふれるようになりました。

そして2001年以降、クラブの存在は一気に知られるようになりました。

今日までクラブのシンボル的存在であり続けるこのテラスは、イビサ島の数多いクラブの中でも最もユニークなパーティースペースであり、まるで航空機がクラブそのものに着陸するのではないかと思うほどの耳をつんざくような騒音に包まれながら、焼け付くような日の光に照らされています。
それはまさに、普通のクラブで味わうことが出来ないような体験でした。

屋根とミラーのレイアウトが部分的に変更され、サウンドシステムが定期的に新しいものに変えられたものの、DC10特有のパワフルなセッションの本質は当時のものと全く変わっていません。

数多くのアワード受賞や賞賛の声を受けながら、他の多くの前衛的なアンダーグラウンド・パーティーが誕生しては今日まで残っているDC10。本当のクラブとは何かという問いに対する真の答えを示しつづけ、その栄光はクラブ文化の歴史の中に織り込まれています。毎週月曜のアフターアワー・パーティーとCirco Loco、そのどちらかがもし欠けていたとしたら、この栄光は達成できなかったと言えます。

そんなDC10の存在価値を理解できない人たちによって、DC10はこれまで幾度も閉鎖、法的整理など、全体未聞の危機にさらされて度々その存在を危うくしてきました。それにもかかわらず、幾度の苦難を乗り越える度にDC10は力強く復活し続けてきたのです。

クラブ文化の「最後の審判」の瞬間があるとすれば、DC10は間違いなく、最も有名なダンスミュージックの殿堂として、その地位を揺るぎないものにするでしょう。